WadCraftでは、セクターやThingなど編集の対象になるマップの要素を、総称してオブジェクトと呼びます。
ここでは、一般的なオブジェクトの編集の仕方を解説します。
まず、オブジェクトを編集するには、その前に選択をしておく必要があります。選択の仕方は、単にそのオブジェクトの上でマウスの左ボタンをクリックするだけです。
すると、通常白色で表示されているオブジェクトが赤色に変わります(図1)。
図1 Thingの一つが選択された状態
この時、ステータスバーの左側の区画には、選択されたオブジェクトのいくつかの情報が表示されます(図2)。
図2 選択されたオブジェクトの情報
また、選択を解除する時は、マップ内のオブジェクトが無い部分(つまり、Void Space)をクリックするか、または、Escキーを押します。
オブジェクトが選択されている状態から、実際に編集するには、次の三つのいずれかの方法を取ります。
@ Enterキーを押す。
A ツールバーの中の「選択オブジェクトの編集」ボタン を押す。
B 「編集(E)」メニューの中の「選択オブジェクトの編集...」を選択する。
すると、頂点オブジェクト以外では、編集用のダイアログボックスが開きます。
以降では、オブジェクトごとの編集の概要を解説します。
まず、セクターの場合は、選択する時は、セクター内部の他のオブジェクトが無い部分であればどこをクリックしても構いません。選択されると、そのセクターを囲む全ての直線が赤色で表示されます。
上で述べたいずれかの編集コマンドを実行すると、図3のようなダイアログボックスが開きます。
図3 セクター編集ダイアログボックス
このダイアログボックスには、編集できるフィールドが全部で七つあります。
最初のFloor HeightとCeiling Heightは、それぞれ床と天井のZ座標値を指定します。この値も理論的には、-32768から+32767の範囲内で指定出来ますが、おそらく実際には±1000を超える値を使うマップはほとんど無いと思います。デフォルトでは、床が0、天井が128になっています。
次のFloor FlatとCeiling Flatは、それぞれ床と天井のテクスチャを指定します。DOOMでは、床と天井用のテクスチャについては、Flatという呼び方をします。その分、ただのテクスチャと言った場合は、DOOMでは壁用のテクスチャを意味します。Flatの大きさは全て64X64に固定されています。
次のLight Levelは、セクターの明るさを指定します。指定出来る値は、0から255までですが、オリジナルのDOOMでは、実際の明るさの段階は32段階しかありませんでした。つまり0から255までの値は、8ごとに均等に分けられて、0から31までの値に割り当てられます。しかし、これはあくまでもオリジナルのソフトウェアによるレンダリングの場合で、OpenGLやDirectXなどの3Dライブラリを使うDOOMポートでは、そのまま256段階の値が反映される可能性が高いです(GLDoom2007も実際にそうなっています)。デフォルトの値は、160です。
残りのフィールドであるSpecialとTagについては、後の回で解説します。
セクターを削除する時は、まず選択をしてから次のいずれかの方法を取ります。
@ Deleteキーを押す。
A ツールバーの中の「選択オブジェクトの削除」ボタン を押す。
B 「編集(E)」メニューの中の「選択オブジェクトの削除」を選択する。
DOOMでは、マップ内の直線(線分)要素をLinedefと呼びます。WadCraftでは、Linedefはセクターを作成する時の輪郭線として作られます。レベルエディタによっては、単独でLinedefを作れる場合もあります。
Linedefはエディタ上では直線に見えますが、ゲーム空間では、通常『壁』になります。このため、壁のテクスチャなどを変更する時は、Linedefを編集します。
また、Linedefはセクターとセクターとの境目になる時もあります。このように、両側にセクターのあるLinedefは、Two-sided Linedefと呼ばれます。この時のLinedefは、通常の壁ではなしに、隣り合うセクターの床や天井の高さの違いによる『段差』の部分の壁になります。もし、隣り合うセクターの床も天井も高さが同じ場合は、壁は全くありません。
Linedefが一つのセクターにしか面していない場合は、Single-sided Linedefとも呼ばれます。
Linedefを選択する時も、その上で左クリックするだけですが、選択できる部分が細いので、多少やりにくいです。選択されたLinedefは、進行方向右側に法線が短く表示されます(図4)。
図4 Linedefの一つが選択された状態
この状態で、上で述べた編集コマンドのいずれかを実行すると、図5のようなダイアログボックスが開きます。
図5 Linedef編集ダイアログボックス
ダイアログボックスの左側には、Flags、Special、Tagという三つのフィールドがありますが、これらについては次回以降に、具体的な例を作りながら解説します。
ダイアログボックスの右側には、Right Sidedefと書かれたタブがあります。Two-sided Linedefの場合は、ここにもう一つLeft Sidedefと書かれたタブが現れます。
Sidedefとは、Linedefのセクターに面している側の壁の属性を決めるデータ構造で、主に壁のテクスチャに関する指示を行います。
Sidedefが一つだけの場合は、必ずRight Sidedefの方があります。つまり、Single-sided Linedefの場合は、必ず進行方向右側にセクターがあります。
Linedefの削除については、WadCraftでは、間接的に削除する方法しかありません。つまり、セクターを削除するか、あるいは二つのLinedefの間にある頂点を削除する事で実現するしかありません。
頂点(Vertex)に対して出来る操作は、移動と削除のみで、他のオブジェクトのような編集ダイアログはありません。
移動の仕方は、単にマウスの左ボタンでドラッグアンドドロップをするだけです。ただし、移動後にLinedef同士が交差してしまうような移動は出来ません。グリッドへのスナップが有効になっている時は、左ボタンを離した時に一番近い格子点に吸着します。
削除については、全ての頂点で出来るわけではなく、二つのLinedefの間にある頂点だけが削除出来ます。もし、三つ以上のLinedefが頂点に繋がっている場合は、その頂点を削除する事は出来ません。また、削除した結果、Linedef同士の交差が起きるような場合は、警告を出してキャンセルされます。削除の仕方は、上で述べたセクターの場合と同じです。
頂点の作成は、普通、セクターの作成に伴って作られますが、後から、任意のLinedef上に頂点を挿入する事も出来ます。
頂点を挿入するには、まずAltキーを押しながら、マウスのカーソルをLinedefの上に持っていきます。すると、Linedefの色が赤色に変わりますので、その時にマウスの左ボタンを押します。
Thingが選択された状態で編集コマンドを実行すると、図6のようなダイアログボックスが開きます。
図6 Thing編集ダイアログボックス
「変更 >>」と書かれたボタンを押すと、マップ上で右クリックした時に現れるポップアップメニューと同じ物が出ますので、そこからThingのタイプを変更する事が出来ます。
Angleと書かれたドロップダウンリストからは、0(east)から315(southeast)までの八つの方角のうちの一つを選択します。この値は、プレイヤーやモンスターの初期状態での向きを表します。これら以外の向きを持たないThingの場合は、この値は無視されます。デフォルトでは、90(north)になっています。
その下のOptionsというフィールドには、五つのチェックボックスがあります。最初の三つは、どのスキルレベルでプレイした時に、そのThingが現れるかという事を指定します。DOOMのスキルには、1(I'M TOO YOUNG TO DIE.)から5(NIGHTMARE!)までの五つのレベルがありますが、これらのチェックボックスでは、見て分かる通り、1と2、4と5は別々に設定する事は出来ません(1と5はゲームプログラム中で特別に扱われるので2と4とは全く同じにはなりません)。通常では、易しいレベルにメディキットなどのアイテムを多く置き、難しいレベルにモンスターを多く配置しますが、決まった規則は無いので、変則的な組み合わせも可能です。デフォルトでは、全てのレベルで現れるように、チェックが付けられています。
次のDeaf guardというオプションは、モンスターだけに適用されます。通常、モンスターがプレイヤーに対して攻撃を始めるきっかけになるのは、1)モンスターの視界にプレイヤーが入った時、2)プレイヤーの銃声が聞こえた時、のどちらかです。このDeaf guardオプションを付けておくと、銃声は聞こえても、視界にプレイヤーが入らない限りは攻撃してきません。銃声の聞こえる範囲は距離にはよらず、プレイヤーのいるセクターとモンスターのいるセクターがTwo-sided Linedefで繋がっている限りは音が聞こえます。ただし、間に閉じているドアがある時は、音は届きません。
最後のMultiplayer onlyというオプションは、その名の通りマルチプレイヤーモードの時だけ現れるようにするオプションです。
Thingも頂点と同じような方法で、移動と削除が出来ます。ただしThingの場合は、移動の時でもグリッドにスナップされる事はありません。Thingを削除する時は、何の制限もありません。